エブラーヒーム・ライースィー
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セイイェド・エブラーヒーム・ライースィー سید ابراهیم رئیسی | |
2024年5月19日のライースィー
(墜落事故の数時間前に撮影) | |
任期 | 2021年8月3日 – 2024年5月19日 |
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副大統領 | モハンマド・モフベル(第一) |
最高指導者 | アリー・ハーメネイー |
任期 | 2019年3月7日 – 2021年7月1日[3] |
最高指導者 | アリー・ハーメネイー |
出生 | 1960年12月14日 イラン マシュハド[4] |
死去 | 2024年5月19日(63歳没)[5] イラン 東アーザルバーイジャーン州 |
政党 | 戦闘聖職者協会など |
配偶者 | ジャミーレ・アラモルホダー (ジャミレ・アラモルホダ[6]) |
子女 | 2人 |
宗教 | イスラム教シーア派 |
署名 |
セイイェド・エブラーヒーム・ライースィー[注釈 1](ペルシア語: سید ابراهیم رئیسی [ebɾɒːˈhiːm-e ræˈiːsiː] ( 音声ファイル)、ラテン文字表記:Seyed Ebrahim Raisi、英語: Ebrahim Raisi、1960年12月14日[7][8] - 2024年5月19日[9][10])は、イランの政治家、司法関係者、イスラム教シーア派ウラマー(アーヤトッラー[11])。同国第8代大統領(2021年8月3日[12] - 2024年5月19日)。マシュハドのエマーム・レザー廟を管理する慈善団体アースターン・ゴドス・ラザヴィーの2代目守護者(最高責任者、2016年3月 - 2019年3月)[13]。検事総長、司法府第一副長官、司法府長官[3]を歴任した。
2024年5月19日、東アーザルバーイジャーン州ヘリコプター墜落事故により死亡[14][10][15]。
司法関係者としての経歴
[編集]パフラヴィー朝時代の1960年12月14日にマシュハドに誕生。コラサン神学校を卒業した。
イラン革命後の1985年に首都テヘランの次席検事に任命されて、同地へ引っ越した[16]。その3年後である1988年の初め頃、革命によりイランの最高指導者となったルーホッラー・ホメイニー(アヤトラ・ホメイニ師)の目にとまり、ロレスターン州、セムナーン州、ケルマーンシャー州など各州の法的問題に取り組むために、ホメイニーから特別な規定(司法から独立したもの)を授けられた。
その後もイランの司法関係者として様々な役職を歴任しており、具体的には2014年9月から2016年4月にかけて検事総長、2004年8月から2014年9月にかけては司法府第一副長官を務めていた。2019年3月に司法府長官に就任した[3]。
2017年の大統領選挙
[編集]2017年4月6日に来たる5月の大統領選挙に出馬することを表明[17]。その後、大統領選挙の最終登録日である4月15日までに、ライースィーや現職の大統領ハサン・ロウハーニーなどを含めた18歳から92歳の老若男女1636人が立候補する中で[18]、4月20日、ライースィーとロウハーニー大統領を含む6人の候補者が、正式に選挙参加資格を認められた[19]。選挙戦の終盤、ライースィーと同じ保守候補者で、テヘラン市長でもあるモハンマド・バーゲル・ガーリーバーフが大統領選を辞退すると同時にライースィーへの全面的な支持を表明し、自身を支持する有権者たちにライースィーを支持するよう働きかけた[20]。
2017年5月19日に大統領選が行われ、翌20日にアブドッレザー・ラフマーニー・ファズリー内務大臣より開票結果が発表、開票された4122万131票の有効票のうち、ライースィーは約38.3%に相当する1578万6449票を獲得したが、現職のロウハーニー大統領が有効投票の過半数となる2354万9616票を獲得したため、決選投票にはもつれ込まず、ライースィーの落選が確定した[21]。イランでイスラム共和制による大統領選挙が始まって以来、落選した大統領候補としては得票数、得票率ともに過去最高を記録しており、イラン大統領選史上で最も僅差で落選した大統領候補となった。これまでは、2009年の大統領選挙で落選したミールホセイン・ムーサヴィー候補が獲得した1321万6411票(得票率は約33.75%)、および2005年の大統領選挙で落選したハーシェミー・ラフサンジャーニー候補が獲得した得票率35.93%(得票数は1004万6701票)が過去最高であった[22]。
2021年の大統領選挙
[編集]2020年6月の時点では2021年の大統領選挙には出馬しない意向を示していた[23]が翻し、2021年5月に立候補届を提出[24]。同月25日に立候補届が受理されたことが発表された[25]。
2021年6月18日に投票が行なわれ、集計の結果、開票された2893万3004票のうちライースィーが約61.95%に相当する1792万6345票を獲得し、決選投票にもつれ込まず1回目の投票で当選が確定した[26][27]。
大統領として
[編集]内政
[編集]内政においては、人権弾圧を主導したとされ、検事としての40年間に反体制派数千名を粛正し「テヘランの屠殺者」と呼ばれた[28][29]。米国米国務省の マシュー・ミラー報道官は5月20日の記者会見で、ライシ師がイラン国民の弾圧を続けてきた事実を指摘し、「彼の両手が血で汚れている現実は変わらない」と批判した[30]
外交
[編集]2021年9月、就任後の初外遊先としてタジキスタンを訪れ、ドゥシャンベで開催された上海協力機構(SCO)の首脳会議にも出席したライースィーはイランの正規加盟が認められたことを受けて「SCOへの加盟で一方的な制裁に対抗できるようになる」と述べた[31]。
妻のジャミーレ・アラモルホダー(ジャミレ・アラモルホダ)も大統領夫人として外交活動を行なうことがあり、2023年パレスチナ・イスラエル戦争では欧州40か国の首脳夫人に書簡を送って、ガザ地区の窮状を訴え、イスラエルを非難した[6]。
経済
[編集]2017年、ライースィーは「抵抗経済の活性化がこの国の貧困と剥奪を終わらせる唯一の方法だと考えている」と報告した。彼は商業小売よりも農業部門の発展を支持している。
同年、彼は汚職に立ち向かい600万人の雇用を創出するために、現在国民1人当たり45万リヤルである月々の国家給付金を3倍にすると約束した。
また、対イラン制裁について「制裁は経済的権限強化の機会とみなされるべきであり、我々は不足するのではなく自らを強化すべきである」と述べ、制裁解除の問題に関して「(選挙で)就任するすべての政府は圧政的な制裁を解除すべきであり、それは真剣に追求されなければならない。そして制裁の無力化は議題にされるべきであり、我々はそうすべきではない」と述べている[32]。
選挙経歴
[編集]年 | 選挙の種類 | 得票数 | 得票率 | 順位 | 結果 |
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2006年 | 専門家会議選挙 | 200,906 | 68.6% | 1位 | 当選 |
2016年 | 専門家会議選挙 | 325,139 | 80.0% | 1位 | 当選 |
2017年 | 大統領選挙 | 15,786,449 | 38.30% | 2位 | 落選 |
2021年 | 大統領選挙 | 17,926,345 | 61.95% | 1位 | 当選 |
墜落事故により死去
[編集]2024年5月19日、ライースィーはアゼルバイジャンを公務(ダムの開所式)で訪問した後、ホセイン・アミールアブドッラーヒヤーン外務大臣、東アーザルバーイジャーン州知事のマーレク・ラフマティー、東アーザルバーイジャーン州での最高指導者代理人のモハンマド・アリー・アーレハーシェム[33]とともにヘリコプターに搭乗し、タブリーズに向けて出発したが、その後イラン時間(UTC+3:30)13時30分頃、一部の乗客が緊急通報を行った直後にライースィーらを乗せたヘリコプターがディズマール森林地帯に墜落した。発見された機体は黒焦げの状態であり、イラン当局は搭乗者全員の死亡を発表した[34]。
私生活
[編集]ライースィーは、マシュハドの金曜礼拝導師を務めるアフマド・アラモルホダーの娘であるジャミーレ・アラモルホダーと結婚している。彼女はシャヒード・ベヘシュティー大学の准教授で、また、同大学の基礎科学工学研究所の所長でもある[35]。夫婦の間には娘が二人いる。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ “イラン基礎データ”. 日本国外務省. 2023年6月23日閲覧。
- ^ 「イラン大統領 ヘリ墜落死/外相も 濃霧、山中に残骸」『読売新聞』朝刊2024年5月21日1面
- ^ a b c “Ayatollah Khamenei appoints Iran's new Judiciary chief”. Press TV. (2019年3月7日) 2019年3月13日閲覧。
- ^ 略歴: イスラーム聖職者でムスリムのセイイェド・エブラーヒーム・ライースィー (شرح زندگی :: حجت الاسلام و المسلمین سید ابراهیم رئیسی)
- ^ Gambrell, Jon (2024年5月20日). “'No sign of life' at crash site of helicopter carrying Iran's president, others” (英語). AP News 2024年5月20日閲覧。
- ^ a b イラン大統領夫人書簡 40通 「反イスラエル」主張 欧州の送付『読売新聞』朝刊11月9日(国際面)同日閲覧
- ^ 自身のパスポートを掲げるライースィー
- ^ 検事総長になった54歳の男性とは?/ エブラーヒーム・ライースィーについて知る (مرد 54 ساله ای که دادستان کل کشور شد، کیست؟/ ابراهیم رئیسی را بیشتر بشناسید) - 2014年8月24日
- ^ Gambrell, Jon (2024年5月20日). “'No sign of life' at crash site of helicopter carrying Iran's president, others” (英語). AP News 2024年5月20日閲覧。
- ^ a b “イランのライシ大統領と外相が死亡と当局者、ヘリ墜落で”. ロイター (2024年5月20日). 2024年5月20日閲覧。
- ^ “Iran president felicitates Lebanon on independence anniversary”. Tehran Times. (2021年11月21日) 2021年11月23日閲覧。
- ^ “イラン新大統領が就任 超保守派のライシ師”. AFP BB (2021年8月3日). 2024年1月6日閲覧。
- ^ エブラーヒーム、アースターン・ゴドス・ラザヴィー守護者に任命される (انتصاب ابراهیم رئیسی به تولیت آستان قدس رضوی) - 2016年3月7日
- ^ “Helicopter carrying Iran's president suffers a 'hard landing,' state TV says without further details” (英語). AP News (2024年5月19日). 2024年5月19日閲覧。
- ^ “イランのライシ大統領や外相ら全乗員死亡 ヘリ不時着で 現地報道”. 朝日新聞デジタル. 朝日新聞社 (2024年5月20日). 2024年5月20日閲覧。
- ^ エブラーヒーム・ライースィーとは何者か? (ابراهیم رئیسی کیست؟) - 2016年3月7日
- ^ Hardline cleric Raisi to take on Rouhani in Iran's presidential election | Reuters - 2017年4月9日
- ^ 「イラン大統領選挙の候補者の登録終了、1636人が登録」Pars Today(2017年4月16日)
- ^ 「イラン大統領選挙の候補者名が発表」Pars Today(2017年4月21日)
- ^ 「イラン大統領選挙、選挙運動が続く中、ガーリーバーフ氏が出馬を辞退」Pars Today(2017年5月16日)
- ^ 「第12期イラン大統領選挙、現職のロウハーニー大統領の留任確定」Pars Today(2017年5月20日)
- ^ 歴代の大統領選挙や主要な選挙と比較して、「ライースィー」は最も力強く惜敗した大統領候補として名を残した / イラン8州におけるロウハーニー大統領の敗北+一覧表 (مقایسه آرای منتخبان ریاستجمهوری و رقبای اصلی در ادوار گذشته «رئیسی» رکورد قدرتمندترین رقیب رئیس جمهور منتخب را زد/شکست روحانی در 8 استان+جدول) - 2017年5月22日
- ^ Iranian press review: Conservatives gear up for 2021 presidential elections | Middle East Eye
- ^ “イラン大統領選 保守強硬派の実力者らが立候補届け出”. 産経新聞. (2021年5月16日) 2021年5月26日閲覧。
- ^ “イラン大統領選”. 時事ドットコム. 時事通信社. (2021年5月25日) 2021年5月26日閲覧。
- ^ イラン暦1400年の選挙開票結果 | 「ライースィー」が第8代イラン大統領に (نتایج آرای انتخابات ۱۴۰۰ | «رئیسی» هشتمین رئیس جمهور ایران شد)
- ^ “イラン大統領選挙 ライシ師 当選”. NHK NEWSWEB. NHK. (2021年6月19日) 2021年6月20日閲覧。
- ^ 「大統領死亡したのに踊って花火…歓呼するイランの青年たち」『中央日報』2024-5-22
- ^ 「【イラン大統領がヘリ墜落死!】『墜落の真相とイランの状況』」『長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル』2024-5-22 - YouTube
- ^ 「墜落死のイラン大統領、米国務省「彼の両手が血で汚れている現実は変わらない」」『読売新聞』2024-5-21
- ^ “イラン、中ロ主導組織加盟へ 上海協力機構が合意”. 日本経済新聞. (2021年9月17日) 2021年9月18日閲覧。
- ^ Lifting, Fordham University Press, (2021-05-04), pp. 26–28 2023年7月18日閲覧。
- ^ “Who was on the missing helicopter?”. Al Jazeera Media Network (2024年5月19日). 2024年5月19日閲覧。
- ^ 「イランの大統領、外相が事故死 イラン国営テレビが報道 搭乗のヘリが墜落」産経新聞ニュース(2024年5月20日)
- ^ ライースィーの夫人、ライースィーについてかく語りき (ناگفتههای همسر رئیسی از رئیسی) - 2017年4月23日
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 公式ウェブサイト
- セイイェド・エブラーヒーム・ライースィー (@raisi_org) - Instagram
- ライースィー師とは? - イラン・イスラム共和国放送ニュースサイト「Pars Today」による
- 2017年イラン大統領選の現地取材およびレポート - 東京外国語大学の松永泰行教授による
公職 | ||
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先代 ハサン・ロウハーニー |
イラン大統領 2021年8月3日 - 2024年5月19日 |
次代 モハンマド・モフベル 第一副大統領による職務代行 |
先代 サーデグ・ラーリージャーニー |
イラン司法府長官 2019年3月 - 2021年7月 |
次代 ゴラームホセイン・モフセニー・エジェイー |
先代 アッバース・ヴァーエズ・タバスィー |
アースターン・ゴドス・ラザヴィー守護者(最高責任者) 2016年3月 - 2019年3月 |
次代 アフマド・マルヴィー |
先代 略(定数88名) |
イラン専門家会議議員 2007年2月 - 2024年5月19日 |
次代 略 |
先代 ゴラームホセイン・モフセニー・エジェイー |
イラン検事総長 2014年9月 - 2016年4月 |
次代 モハンマドジャアファル・モンタゼリー |
先代 ホセインアリー・アミーリー |
イラン司法府第一副長官 2004年8月 - 2014年9月 |
次代 ゴラームホセイン・モフセニー・エジェイー |