グエン・フー・チョン
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グエン・フー・チョン Nguyễn Phú Trọng 阮富仲 | |
グエン・フー・チョン(2023年撮影)
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任期 | 2011年1月19日 – 2024年7月19日 |
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国家主席 | グエン・ミン・チエット チュオン・タン・サン チャン・ダイ・クアン グエン・フー・チョン(兼務) グエン・スアン・フック ヴォー・ヴァン・トゥオン トー・ラム |
任期 | 2018年10月23日 – 2021年4月5日 |
国家副主席 | グエン・チ・ゾアン ダン・ティ・ゴック・ティン |
共産党書記長 | グエン・フー・チョン(兼務) |
首相 | グエン・タン・ズン グエン・スアン・フック |
任期 | 2011年1月19日 – 2024年7月19日 |
任期 | 2006年6月26日 – 2011年7月23日 |
国家主席 | グエン・ミン・チェット |
出生 | 1944年4月14日 フランス領インドシナ連邦 大南 河内市東英県 |
死去 | 2024年7月19日 (80歳没) ベトナム ハノイ市ホアンキエム区 第108軍中央病院 |
政党 | ベトナム労働党(1967年 - 1976年) ベトナム共産党(1976年 - 2024年) |
出身校 | ハノイ総合大学 |
配偶者 | ゴ・ティ・マン |
子女 | 2人 |
グエン・フー・チョン | |
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各種表記 | |
チュ・クオック・グー: | Nguyễn Phú Trọng |
漢字・チュノム: | 阮富仲 |
日本語読み: | げん ふうちゅう |
英語表記: | NGUYEN Phu Trong |
グエン・フー・チョン(阮 富仲、ベトナム語:Nguyễn Phú Trọng / 阮富仲、1944年4月14日 - 2024年7月19日)は、ベトナムの政治家、2011年から2024年まで、ベトナム共産党中央執行委員会書記長(同国の最高指導者)を務めた。
第6代ベトナム国会議長を務めた後、第7代ベトナム共産党中央執行委員会書記長、中央軍事委員会書記を務め、党内序列は第1位、最高指導者に就任。2018年10月から2021年4月まで国家主席も兼任した。長らくベトナム共産党の理論・思想分野で活躍し、保守派に属している[1]。準博士 (Кандидат наук、博士候補) 。
経歴
[編集]ハノイ市に生まれる。ベトナム戦争中の1963年から1967年にかけて、ハノイ総合大学で文献学を学ぶ。大学卒業後の1968年12月19日、ベトナム労働党(後のベトナム共産党)に入党。
入党後は党中央理論機関誌『タップチ・コンサン(共産雑誌)』の編集部に勤務。1973年9月から1976年4月まで、グエン・アイ・クォック党高級学校政治経済学部大学院に学ぶ。1981年9月からソ連社会科学アカデミーに留学し、1983年7月に歴史科学準博士の学位を取得。帰国後は、再び『タップチ・コンサン』編集部に戻り、1990年5月に副編集長に就任。1991年から1996年までは編集長を務め、党の理論的主柱としてドイモイ政策を思想面から支えた[2]。
1994年1月に開催されたベトナム共産党臨時党大会において、第7期党中央委員に選出された。1996年6月28日から7月1日にかけて開催された第8回党大会で中央委員に再選され、ハノイ市党委員会副書記に任命された。
政治局員
[編集]1997年12月末、第8期党中央委員会第4回総会において政治局員に選出され、思想・文化・科学教育を担当する。党内序列は第19位となった[3]。1999年8月、政治局常務委員に昇格する。2000年3月1日、ハノイ市党委員会書記に就任。また、党中央理論評議会議長を兼務した。2001年4月の第9回党大会では、政治局常務委員会が廃止されたため政治局員にのみ再選出され、序列第7位に昇格した。
2006年4月の第10回党大会で政治局員に再選出されて党内序列第6位となったチョンは、同年6月26日、第11期国会第9回会議において国会議長に選出された。さらに翌2007年7月24日、第12期国会第1回会議において国会議長に再選される[4]。
党書記長
[編集]2011年1月に開催された第11回党大会で中央委員に再選されたチョンは、党大会開催中の1月18日に開かれた第11期党中央委員会第1回総会で党書記長・政治局員に選出され[5]、翌日の党大会で書記長就任を承認された[6][7]。同年7月、第13期国会第1回会議において国会議長を退任し、グエン・シン・フン第一副首相に引き継いだ[8][9]。
2015年7月7日、ベトナム戦争後、最高指導者として初めて訪米してバラク・オバマ大統領とホワイトハウスで会談した[10]。
2015年9月15日に来日し東京都内での講演も行った[11]。
2018年10月23日、9月に死去したチャン・ダイ・クアン国家主席の後任としてベトナム国会より国家主席に選出され、党書記長と兼任することとなった[12]。ベトナムで書記長と国家主席を兼務するのは、ホー・チ・ミン、チュオン・チンに次ぎ3人目[13]。
2021年1月に開催された第13回党大会で党書記長に再任され、党規約を超える3選となった[14]。同年3月に次期国家主席にグエン・スアン・フック首相が推薦され[15]、これに伴い4月2日に国会は賛成438、反対・棄権各1票でチョンの国家主席からの解任を承認した[16]。
2024年7月18日、ベトナム共産党はチョンが病気治療に専念し、代わりに序列第2位のトー・ラム国家主席が党中枢を統括することを決定したが、チョンの詳細な病状などについては明らかにされていない[17]。
死去
[編集]同年7月19日午後1時38分、病気のためハノイ市の第108軍中央病院で在職中に死去した。80歳没[18][19]。
ベトナム政府は7月25日から2日間、チョンの国葬を実施することを発表[20]。
チョンの死去に際し、中国共産党中央委員会、カンボジアのフン・マネット首相、キューバのミゲル・ディアス=カネル大統領及びラウル・カストロ元共産党第一書記、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領から弔意が示された[21]。
日本の岸田文雄首相及び上川陽子外相もチョンの死去を受けて、「日本とベトナムが包括的戦略的パートナーとして、広範な分野で緊密な協力関係を築いていく上で大きな指導力を発揮されたことに触れつつ、チョン書記長の日越関係に対する多大な御貢献に心から敬意を表します」とメッセージを送った[22]。
脚注
[編集]- ^ “次期書記長にチョン氏 ズン首相は続投へ 越共産党が指導部人事内定”. MSN産経ニュース. 共同通信 (産経新聞). (2010年12月18日) 2011年1月1日閲覧。
- ^ 藤谷健 (2010年12月18日). “ベトナム、次期書記長に親中派チョン議長 ズン首相続投”. asahi.com (朝日新聞) 2011年1月1日閲覧。
- ^ 第8期中央委員会第4回総会の段階で、党政治局員は総勢19名。1999年1月16日にドアン・クエ党政治局員兼党中央軍事委員会副委員長が死去したため、政治局員は18名となる。2000年5月3日発表のファム・ヴァン・ドン元首相葬儀委員会におけるチョンの序列は第18位。寺本(2002年3月)、29・50ページ。
- ^ 第12期国会第1回会議広告3号 (Thông cáo số 3 kỳ họp thứ nhất, Quốc hội Khóa XII)
- ^ 藤谷健 (2011年1月19日). “ベトナム共産党、最高指導部人事を発表 党大会閉幕”. asahi.com (朝日新聞) 2011年1月19日閲覧。
- ^ “ベトナム 次期最高指導部決定”. NHKニュース (日本放送協会). (2011年1月19日) 2011年1月19日閲覧。
- ^ 宮野弘之 (2011年1月19日). “ベトナム共産党大会、新指導部人事を承認”. MSN産経ニュース (産経新聞) 2011年1月30日閲覧。
- ^ “新国会議長にフン氏 ベトナム”. MSN産経ニュース. 共同通信社 (産経新聞). (2011年7月23日) 2011年7月26日閲覧。
- ^ "Deputy PM Hung nominated as NA Chairman" (Press release) (English). The National Assembly Office of Vietnam. 23 July 2011. 2011年7月26日閲覧。
- ^ “「敵からパートナーに」チョン書記長が初訪米、オバマ大統領と会談”. (2015年7月9日) 2015年7月13日閲覧。
- ^ 南シナ海防衛、「日本も責任」=ベトナム書記長が講演 - msn(2016年2月7日閲覧)
- ^ “ベトナム書記長、国家主席を兼務=国会が選出-権力基盤を強化”. AFPBB News. フランス通信社. (2018年10月23日) 2018年10月24日閲覧。
- ^ “ベトナム書記長、国家主席兼務へ=指導力強化で改革加速-対日友好は維持” (2018年10月3日). 2018年10月24日閲覧。
- ^ “チョン書記長、続投 統一以来初の3期目―ベトナム”. ロイター. (2021年1月31日) 2021年2月1日閲覧。
- ^ “フック首相、新国家主席に推薦 3月24日開幕の国会で選出”. 日刊ベトナムニュース. (2021年3月16日) 2021年4月4日閲覧。
- ^ “Quốc hội miễn nhiệm Chủ tịch Nước đối với ông Nguyễn Phú Trọng”. Lao Động. (2021年4月2日) 2021年4月4日閲覧。
- ^ “ベトナム序列2位がトップ代行 チョン書記長は治療専念”. 日本経済新聞. (2024年7月18日) 2024年7月18日閲覧。
- ^ “Tổng Bí thư Nguyễn Phú Trọng từ trần” (ベトナム語). Báo Nhân Dân điện tử (2024年7月19日). 2024年7月19日閲覧。
- ^ “Vietnamese leader Nguyen Phu Trong dies at 80”. BBC News. British Broadcasting Corporation (2024年7月19日). 2024年7月19日閲覧。
- ^ “Vietnam to hold two-day state funeral for Party General Secretary Nguyen Phu Trong next week - VnExpress International”. 2024年7月21日閲覧。
- ^ “Condolence message for General Secretary Nguyen Phu Trong on his death - Vietnam.vn” (英語) (2024年7月19日). 2024年7月19日閲覧。
- ^ “グエン・フー・チョン・ベトナム共産党書記長の逝去を受けた岸田総理大臣及び上川外務大臣による弔意書簡の発出”. 外務省 (2024年7月20日). 2024年7月20日閲覧。
参考文献
[編集]- 白石昌也、竹内郁雄(編)『ベトナムのドイモイの新展開』アジア経済研究所、1999年
- 寺本実「第9回共産党大会と政治・行政」(石田暁恵編『2001年党大会後のヴィエトナム・ラオス—新たな課題への挑戦—』〈トピックリポートNo.46〉アジア経済研究所、2002年3月)
- 寺本実「2011年に向けたベトナム国会・政府 ─ 再編・改造と人事」『アジ研ワールド・トレンド』No.148、アジア経済研究所、2008年1月
- 坪井善明『ヴェトナム新時代 ― 「豊かさ」への模索』岩波新書、2008年 ISBN 9784004311454
外部リンク
[編集]- グエン・フー・チョン共産党書記長兼国会議長略歴(日本国外務省)
- ベトナム共産党第11期中央委員会書記長グエン・フー・チョン同志略伝(ベトナム共産党公式サイト)
- Biography of Party General Secretary Nguyen Phu Trong (Viet Nam News)
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