jQuery
jQuery(ジェイクエリー)は、ウェブブラウザ用のJavaScriptコードをより容易に記述できるようにするために設計されたJavaScriptライブラリである。ジョン・レシグが、2006年1月に開催された BarCamp NYC でリリースした。様々な場面で活用されており、JavaScriptライブラリのデファクトスタンダードと呼ぶ者もいる[2]。ロゴの下に表記されているキャッチコピーは「write less, do more」(「少ない記述で、もっと多くのことをする」の意)。
開発元 | jQueryチーム |
---|---|
初版 | 2006年8月26日 |
最新版 |
3.7.1
/ 2023年8月28日 |
リポジトリ | |
プログラミング 言語 | JavaScript |
サポート状況 | 開発中 |
種別 | Webアプリケーションフレームワーク |
ライセンス | MIT License[1] |
公式サイト |
jquery |
機能・特徴
編集jQueryには次のような機能・特徴がある。
配布
編集通常jQueryは単一のJavaScriptファイルとして存在している。このほかパッケージ管理システム(npm、Yarn、Bower)やコンテンツデリバリネットワーク(CDN)(Google、マイクロソフトなど)で配信されている[4]。
ライブラリにリンクする例(同一ホスト・サーバーから):
<script src="jquery.js"></script>
公式のパブリックCDN、code
<script
src="https://code.jquery.com/jquery-3.6.0.min.js"
integrity="sha256-/xUj+3OJU5yExlq6GSYGSHk7tPXikynS7ogEvDej/m4="
crossorigin="anonymous"></script>
インタフェース
編集関数
編集jQueryは、静的メソッドとjQueryオブジェクトメソッドの2種類あり、それぞれに独自の使用スタイルがある。
jQuery
- メインのjQueryオブジェクト$
-jQuery
の別名(エイリアス)
なおjQueryによって再代入された$
変数は、jQuery.noConflict()
を記載した行以降、放棄される。これにより他のライブラリなどで宣言されていた$
変数を復帰することができる[5]。
典型的なスタート方法
編集jQueryをスタートするには次の方法が推奨されている。
function example() {
// 定義された関数による任意のコード
}
$(example);
// または
$(function () {
// 無名関数による任意のコード
});
HTMLの解析を終えると、$()
メソッドで指定された関数をコールバックし、DOM操作などを安全にスタートさせる。同じ働きをしていたレディイベント$(document).on('ready', callback)
は古典的な方法で、jQuery 3.0以降削除されて、動作しない[6]。
メソッドチェーン
編集$()
メソッドは基本的にjQuery
オブジェクトが返る為、次のようにメソッドをつなげていくことが可能である。
$('div.test').add('p.quote').addClass('blue').slideDown('slow');
このコードは、div
タグのクラス属性がtest
のものとp
タグのクラス属性がquote
のもの全てについて、クラス属性blue
を追加し、それらをアニメーション付きでスライドダウンさせる。$()
変数およびadd()
関数は一致する集合を決め、addClass()
とslideDown()
は参照しているノード群に作用する。
Ajax
編集静的メソッドの$.ajax()
を用いて非同期通信を実行することができる。$.ajax()
の返り値にはPromise
インタフェース[7]を実装したDeferred
オブジェクトが返るため、then()
メソッドを用いて要求した結果を受けとる必要がある。
$.ajax({
type: 'POST',
url: '/process/submit.php',
data: {
name : 'John',
location : 'Boston',
},
}).then(function(msg) {
alert('Data Saved: ' + msg);
}).catch(function(xmlHttpRequest, statusText, errorThrown) {
alert(
'Your form submission failed.\n\n'
+ 'XML Http Request: ' + JSON.stringify(xmlHttpRequest)
+ ',\nStatus Text: ' + statusText
+ ',\nError Thrown: ' + errorThrown);
});
このコードは/process/submit.php
にパラメータ name=John&location=Boston
をつけて要求し、その要求が正常に完了したとき、レスポンスを表示する。
jQuery 3.0以前では結果を受けとる際にsuccess
、error
、complete
の各メソッドに指定されたコールバック関数へ渡していたが、以降削除、動作しない[8]。
Fetch APIと似た文法であるが、jQueryではXMLHttpRequest
オブジェクトを利用している為、返されるオブジェクトや、HTTPステータスコードが404
でもエラーとは見なさないなど取り扱いが少し異なる[9]。
採用
編集マイクロソフトとノキアはそれぞれ自社プラットフォームへのjQueryバンドルを計画していると発表した[10]。マイクロソフトは手始めに Visual Studio で採用[11]、ASP.NET開発チームをフルタイムでjQueryの開発に参加のうえ、jQueryを同社のASP.NETにおけるクライアント・サイド・スクリプティングの標準として採用し、同社が開発していた類似技術を全て廃止すると発表、ASP.NET AJAX および ASP.NET MVC Framework で利用する。一方ノキアは同社の Web Runtime プラットフォームに組み込む予定である。
リリース履歴
編集主なリリースを示す。下に行くほど古いバージョンを示している。
リリース日付 | バージョン番号 | 備考 |
---|---|---|
2021年3月12日 | 3.6.0 | |
2020年4月10日 | 3.5.0 | |
2019年4月10日 | 3.4.0 | |
2018年1月19日 | 3.3.0 | 古い関数の廃止、クラスを受け付ける関数において配列形式にも対応 |
2017年3月16日 | 3.2.0 | <template> 要素の内容を取り戻す対応を追加、様々な古いメソッドを廃止
|
2016年7月7日 | 3.1.0 | Deferredモジュールのエラーハンドリング改善。 |
2016年6月9日 | 3.0.0 | DeferredのPromises/A+互換化。カスタムセレクタの高速化。Ajax機能を含まない軽量版の提供。ES2015のfor ofループへの対応。requestAnimationFrameへの対応など。 |
2016年1月14日 | 3.0.0-beta1 | AlphaからBetaに移行。Alpha時点で存在していた、IE8対応のjQuery compatは、Microsoft社によるIEのサポートポリシー変更に伴って開発停止。 |
2016年5月20日 | 2.2.4、1.12.4 | 1系、2系の最終バージョン。 |
2016年1月8日 | 2.2.0、1.12.0 | 1系、2系の機能追加はこのバージョンで終了し、今後はバグの修正のみとなる。パフォーマンスの改善、SVGクラスの操作等の新機能追加。 |
2014年1月24日 | 2.1.0、1.11.0 | |
2013年4月18日 | 2.0.0 | Internet Explorer 6, 7, 8 の非サポート,ファイルサイズを12%少なくしたこと等。APIは1.9との互換性を維持している。 |
2013年1月15日 | 1.9 FINAL / 2.0 beta | .toggle等の利用頻度の低いAPIの廃止(廃止されたAPIはjQuery Migrate Pluginとして別途提供) |
2012年8月9日 | 1.8 | CSSのベンダープレフィックスを自動付加、5つのモジュールに分割、アニメーション処理刷新、Sizzle(セレクター解析エンジン)再構築、XSS対策強化、ソフトウェアライセンスの単一化 |
2011年11月3日 | 1.7 | .bind(), .delegate(), .live()等の一部APIの統合、新規APIの追加、一部API連携の改善、IEでの不具合/仕様の対応 |
2011年5月3日 | 1.6 | パフォーマンス改善、.attr(), .val()の拡張、アニメーション処理の改善 |
2011年1月31日 | 1.5 | Ajax関連モジュールのコード刷新、settingに新規プロパティを追加、Deferredオブジェクト追加、一部APIのパフォーマンス改善 |
2010年1月14日 | 1.4 | 大幅なパフォーマンス/実行速度改善 |
2009年1月14日 | 1.3 | Sizzle Selector Engine がコアに導入された。 |
2007年9月10日 | 1.2 | |
2007年1月14日 | 1.1 | |
2006年8月26日 | 1.0 | 最初の安定版 |
2006年6月30日 | 1.0a | α版 |
関連項目
編集脚注・出典
編集- ^ バージョン1.8以降からシングルライセンス化。1.7.2まではMIT LicenseとGNU GPLバージョン2のデュアルライセンス。
- ^ “jQuery Mobileページの基本構造を理解しよう”. @IT. 2012年10月5日閲覧。
- ^ Resig, John (2009年1月14日). “jQuery 1.3 and the jQuery Foundation”. jQuery Blog. 2009年5月4日閲覧。
- ^ “Downloading jQuery” (英語). 2021年4月26日閲覧。
- ^ “jQuery.noConflict()” (英語). 2021年4月26日閲覧。
- ^ “jQuery Core 3.0 Upgrade Guide #Deprecated: document-ready handlers other than jQuery(function)” (英語). 2021年4月26日閲覧。
- ^ “Promise”. MDN. Mozilla. 2021年4月26日閲覧。
- ^ “jQuery Core 3.0 Upgrade Guide #Ajax” (英語). 2021年4月26日閲覧。
- ^ “Fetch API #jQueryとの違い”. MDN. Mozilla. 2021年4月26日閲覧。
- ^ Resig, John (2008年9月28日). “jQuery, Microsoft, and Nokia”. jQuery Blog. jQuery. 2009年1月29日閲覧。
- ^ Guthrie, Scott (2008年9月28日). “jQuery and Microsoft”. ScottGu's Blog. 2009年1月29日閲覧。
参考文献
編集- Chaffer, Jonathon; Karl Swedberg (2007). Learning jQuery: Better Interaction Design and Web Development with Simple JavaScript Techniques. Packt Publishing. ISBN 978-1847192509
- Bibeault, Bear; Yehuda Katz (2008). jQuery in Action. Manning Publications Co.. ISBN 978-1933988351
- Heilmann, Christian (2006). Beginning JavaScript with DOM Scripting and Ajax. Apress. ISBN 978-1590596807 2009年5月4日閲覧。
- Darie, Cristian; Filip Chereches-Tosa, Mihai Bucicia (2005). AJAX and PHP: Building Responsive Web Applications. Packt Publishing. ISBN 978-1904811824
- Heilmann, Christian; Mark Norman Francis (2007). Web Development Solutions. Apress. ISBN 978-1590598061 2009年5月4日閲覧。
- Taft, Darryl K. (2006年8月30日). “jQuery Eases JavaScript, AJAX Development”. eWeek. 2009年5月4日閲覧。
- Krill, Paul (2006年8月31日). “JavaScript, .Net developers aided in separate projects”. InfoWorld. 2009年5月4日閲覧。